ビーチロックに学ぶ新たな地盤固化・自己修復技術

ビーチロックとは,海浜の砂礫が石灰質の物質によって自然に固化した岩のことです(下図)。砂礫が堆積してから岩になるまでには数十万年以上の長い年月が必要ですが,国内のビーチロックの中には数十年で岩になった例があります。ということは,もしビーチロックを加速固化させる技術を新たに開発することに成功すれば,海岸の侵食防止,海岸コンクリートの構造物の劣化抑制・長寿命化,岩盤・コンクリート構造物の亀裂の自己修復などの技術への応用が期待されます。
ビーチロックが固化する主な要因は,海水の蒸発による析出塩であると考えられています。しかし,私たちは海浜の砂礫が岩になることを,現地の微生物が促進していると考えています。ビーチロックの主なセメント物質である炭酸カルシウムは,堆積岩の主なセメント物質であり,環境に優しい物質です。私たちは,ビーチロックが固化するメカニズムを学ぶと同時に,沖縄県のビーチロック周辺から炭酸カルシウムの析出に適した微生物を発見し,その微生物を用いて土を短期間で岩やコンクリートのように固化させる技術を開発しました。さらに,沖縄県の海岸にあるサンゴ砂にもこの技術を適用し,その有効性を確認しています。


合理的な岩盤構造物設計に寄与する岩石の破壊および変形特性に関する実験研究

様々な圧力条件や載荷速度下における岩石の破壊や変形機構に関する実験的研究は, 岩盤構造物の設計を考える上で極めて重要です. 当研究室では, 準静的載荷条件(MTSを使用)~動的載荷条件(SHPBを使用)に至るまでの広範囲の載荷速度条件における岩石の変形・破壊挙動を研究するための力学試験装置を有しています. 一つの研究室で, 準静的~動的載荷条件を試験できる研究室は我が国において極めて珍しいです. また, 実験から得られた知見を最先端の数値解析モデル・手法に反映し, 岩盤構造物の設計の高度化および安定性の向上の実現を目指しています.


岩石破壊プロセスのシミュレーションのための先進的数値モデリングツールの開発と実装

岩石・岩盤の破壊過程の高度数値シミュレーション技術の開発は、資源開発における岩盤破砕の効率化(発破工法やエネルギー資源開発で使用される各種破砕工法)~防災(鉱山における岩盤の安定性,地震)における岩盤の安定性の向上を目指す上で極めて重要です。他方で,岩石・岩盤は各種スケールにおいて不均質性・異方性・載荷速度依存性を示すため,実験や計測技術のみだけでは,上記の目的を達成することは容易ではありません。当研究室では,有限要素法と個別要素法をハイブリッドしたCombined Finite-Discrete Element Method(FDEM)等に代表される世界最高レベルの岩石・岩盤の破壊過程解析法の開発に力を入れています.資源開発・防災を考える際,岩石・岩盤の破壊過程を高度に扱えることで,上記の各種岩盤工学問題を既往研究と比較してより深く・高度な議論が可能になることが期待されます.また,岩石・岩盤に限らず,開発手法はコンクリートや氷などより多くの材料の破壊問題にも適用できると考えられ,国内外の共同研究数が増加しています.また,しばしば用いられる連続体解析法とは異なり,現在開発しているハイブリッド破壊解析法はどうしても計算負荷が高いため,これを解決するために,汎用GPUを用いた大規模計算/High-Performance-Computing技術を積極的に取り入れています.また,Physics informed machine learning等の技術も今度積極的に取り入れることで,シミュレーションの品質・計算速度の両面から世界をけん引できる研究成果の創出を目指します.